県大会発表レポート

    レポートタイトル 業務日誌をつけてみよう
        ~誰でも!簡単に!楽しく仕事を進めるヒント~


1 はじめに
 わたしたち事務職員は、日頃の業務を行う上で、誰もが「計画的な執務をしたい」という願いがあると思います。円滑な執務のために、学校事務必携等に学校行事や業務予定を書き込んだりと、それぞれのやり方で工夫されていることと思います。
 しかしながら、日々煩雑な事務処理に追われ、仕事の整理整頓や段取りができず、ともすれば出たとこ勝負になり、退勤時間に仕事が終わらず、なかなか自分が思うような満足した結果につながりません。
 そこで今回わたしたちは、グループ研修で、業務日誌を活用した事務改善をテーマに選び、それぞれ自由な形式で自分の業務に合うような、自分なりの業務日誌をとりあえずつけてみようということになりました。
 気負わず楽しく業務日誌をつけて、自己目標を達成しようという取組を今回レポートします。そして今回のレポートが、皆さんの仕事の充実感や達成感のヒントになればと思います。

2 取組について
 取組を始めて1カ月たった頃、第2回目のグループ研修があり、お互いの状況を報告し合いました。業務日誌を何に記入するか、特にルールは決めずにそれぞれに任せたのですが、9人中5人が学校事務必携に記入していました。その他ノートやルーズリーフ、業者のスクールメモリーを使用していました。記入する内容は、今日の業務内容・明日やる事・職員の出張・電話の内容・仕事のメモ等々でした。
 業務日誌を1カ月つけてみてどうだったか、生の声を伝えるためにアンケートから抜粋したものを以下に掲載しています。
 ・思いついた時に書いておく事で、朝会での連絡事項など思い出したり忘れたりを繰り返していた事が予定通りできた。仕事の積み残しも同じように、気にはなりつつ後回しにしている事を、書くことで簡単なことはしておこうという気持ちになった。何となく頭の中にあることを書き出すことで、ぐちゃぐちゃになっている時間の感覚が少し整理されている気がする。
 ・毎日のやる仕事が明確になり、1日の仕事のタイムスケジュールが自分の中にできて
  1日を計画的に過ごせるようになった。1日の始めに、毎日文書整理を行うようにしたら楽になった。
  ・自由形式だったので、何を書こうか迷った。
 ・自分が毎日何をしていたか一目で振り返れるので、冷静に反省や自己評価ができる。(達成感を感じることもできた。)
 ・思い返しができ、反省点が見える。
 ・予定と終了した業務を記入しているが、なかなか予定通りにいかないので、翌日に持ち越すことが多い。しなければならないことが把握できて良い。
 ・大きな出来事も記入しているので、後から振り返るときもわかりやすい。
 ・定例的なもの(市費伝票整理や公文書ファイリング等)は、曜日を決めておいてあらかじめ日誌に書いておくといいのかも?!

 それぞれに自分なりの利点を見出したことが分かりました。見えてきたキーワードを挙げると、仕事に必要な「情報の管理」の他、時間の感覚が整理されたという「時間管理」、1日何をしたか振り返りができ、反省点が見えたという「自己評価」及び「自己反省」、また、自己のペースでやるべきことの把握ができたという「自己管理」という項目になりました。
 思うように業務日誌を書けなかった人はどうすれば書くことができるかについても意見を出し合い、自分の時間を作ることや、日誌をつける時間を決めておくなどの提案がありました。
さらに、業務日誌と目標達成との関連についても考えました。グループ研のメンバーの今年度の目標・特に力を入れたいことについては、予算の効率的・計画的な執行、指定校経費(補助金)の計画的な執行、文書整理・文書処理の工夫、備品整理、18時退勤など様々でした。目標を達成するために業務日誌を活かすとしたら、どのような内容を記載すべきか、どのような工夫をして記入すべきかについても考えました。例を挙げると以下のようなものでした。
・今日やることリストを書き、やり残しがないように活用していく。
・4色ボールペンを活用して、業務内容を分ける。
・予定と業務内容を記入。予定分のできない分は翌日繰り越していき、必ず終了させる。目標にからめた予定を週何回か計画的に入れていく。
 ・業務内容とは別に、目標達成に対して取り組んだことを書く欄を設ける。
 ・月毎に達成度とそれに対する反省・評価を記入する。
 ・業務内容(財務・給与・旅費・環境)
・学校行事               このくらいの項目に分けて日誌を書き、 
 ・気づき・反省など           定期的(1ヶ月に1回程度)に振り返る。
 ・職員への連絡事項
 ・毎日することのチェック事項
 ・来校業者 ・物品注文 ・受けたTELの内容記入欄 など。

 以上を参考にして、「お互いにいいとこ取りをして自分の使いやすい業務日誌にしていきましょう」と確認して2回目のグループ研修を終えました。

 第3回目のグループ研修はおよそ2カ月後でした。
 9人中7人が学校事務必携を何らかの形で活用していました。そして、それと併用して、
自分の使いやすいものを使用している人もいました。業務及び出張等は学校事務必携に、
フリーな記述をルーズリーフに記入している、という人やプリント、メモ用紙、ふせん紙
などをノートに貼りつけているという人、卓上カレンダーを活用しているという人のほか
に、業務日誌用の様式を自作して使用している人もいました。また、今日やる事項〈作業
・文書・その他・職員との関係〉を棒グラフで書いている、という新しい取組をした人か
らは、終わったことを書くよりもおもしろくて長続きしやすい、という感想が聞けました。
さらに、やるべきリストは1日単位のスケジュールだけでなく、週ごとや月ごとに書くの
もいいのでは、という提案もありました。
〈工夫したことや感想についてアンケートから抜粋〉
・詳しく記入しておくと、振り返りができて参考になると思った。故障の件とか、
  県に確認・問い合わせしたことなどは、色を変えて目立つようにしておくとわ
  かりやすいと思う。前回の研修で参考になるようなことをたくさん聞いて頑張
  って業務日誌にとりかかろうと思っていたが、結局以前のままだったので、業
  務が終了したらすぐ記入するなど習慣づけが必要と思う。やはり、見返すとき
  には、たくさん記入してある方が役にたちますから・・・。
・「業務日誌」を兼ねた「日記」「備忘録」的な使い方が自分には望ましい気がする。
・本当に余裕がなくなったら、パタッと日誌をかいていませんでした。すると 
  手当り次第に仕事をして、優先順位も間違っていたり、どの仕事も中途半端に
  なっていた。忙しい時こそ、時間を作って1日の流れを書き出したりした方が
  効率もいいし、達成感もあるのではと感じた。
・前回の話し合いをもとに、いいなと思ったものをつけ加えて、自分が書きやすいように日誌を作った。バタバタして「今日1日何をしたのだろう」と思うことも多いが、1日の終わりに日誌をつけることで、1日のまとめと明日すべきことが整理できる。
・計画的な業務を行う。いきあたりばったりの仕事では何も見えてこない。
  今年の目標が達成できないばかりか、やり残したことばかりが目につくこの頃です。
 ・文書がメールで来るようになってメール確認・印刷・受付にかなり時間が取られてい  る中で仕事がうまく回っていない様子がわかり、状況が把握できるようになったと思  う。(心の日誌の部分が多い。)
・仕事の予定を書き出すことにより、優先順位が分かり頭が整理され、心の余裕につながるような気がする。

 お互いに他の人の業務日誌の工夫などを知り、業務日誌の効果などを再認識したとこ
ろで、時期はさらに多忙な2学期へと突入しました。もの忘れ防止の記録で仕事の確実
性を図ったり、優先順位を視覚化して効率化を図るという実務的な効果だけでなく、記
録することで達成感を得たり、意欲付けが出来たりと、業務日誌のさまざまな効果を実
感しながら、各人のやり方で業務日誌をつけて活用していくことを確認した第3回目の
グループ研修でした。
 ここで、業務日誌の具体的な取組をいくつか紹介します。
3 取組の具体例〈Aさん〉
わたしはこの取り組みを始める前は、毎年購入している学校事務必携に学校行事やその日の業務予定を書き込んでいました。その日に行うべき業務を忘れないため、計画的に業務を行うため、また1年を振り返り来年に生かすためです。
第2回目のグループ研修で他の先生方の業務日誌に関するアイディアを聞くことができました。「お互いにいいとこ取りをして自分の使いやすい業務日誌にしていこう」というその研修最後の確認を通して、わたしは学校事務必携への記録をやめて、自分にとってもっと効果的な業務日誌の形を見つけるために新しい業務日誌を作ろうと思いました。そのために、形式は保健日誌を参考にし、項目はグループ研修で出たアイディアを取り入れ、自分なりの業務日誌を作成しました。また、「自己目標達成のための業務日誌の取り組み」ということもありましたので、その達成につながる項目も設けました。
自分で作成した業務日誌をつけてみると、今までとは異なり細かく項目を設けたので、しばらくの間は面倒くさく感じました。帰りが遅くなるときは、帰宅後もしくは翌日に記入してしまうこともありました。しかし、慣れてくるとそれについては改善され、各項目についても必ず記入する習慣がつきました。
自分で作成した業務日誌に慣れてきたころ、その業務日誌が本当に自分に適しているのか確認するために、学校事務必携のみの利用に戻してみました。また、試しに自分の作成した業務日誌の型を、他の事務職員にしばらく利用してもらいました。(項目については、本人が使いやすいように変えてもらいました。)
<気づき>                 ○,●→本人、☆,★→他の事務職員長 所短 所自作業務日誌○項目ごとに細かく書くため明日●1日ごとの業務日誌は、先の見すべきことがはっきりみえてくる。
通しをもつときには不便。学校事○1日の自己評価がしやすくなる。
務必携も併用したほうがよい。
○1日で1枚記入するので、ちょ★給料明細日を忘れてしまった。っとした気づきや反省も記入でき月単位の流れや計画が把握しづらる。
いので、カレンダーのようなもの○☆達成感を感じることができる。
が必要。☆1日のまとめができ、明日への意欲にもつながる。
☆前のことを振り返るときに頼りになる。学校事務必携○手軽で、項目を設定していない●振り返ったときに、どのようなので縛りがなく簡潔に記入できる。
1日だったのか具体的にわからな○先の見通しが立てやすい。い。
●1日の達成感は、自作業務日誌より感じにくい。仕事を計画的に進める上では、どちらも効果的でした。また、自己目標に関する項目を設けると、毎日目標に対しての振り返りができるので、目標達成に効果的ではないかと思いました。
現在は、学校事務必携にのみ記入していますが、自作業務日誌に書いていたような気づきや反省を記入したり、大切なところにシールを貼ったりして自分なりに工夫を続けています。また、今年度は昨年度に比べて4月の業務をうまく進められなかったので、今年度と昨年度の業務日誌(どちらも学校事務必携)を比べて原因を見つけようとしましたが、昨年度の記入は簡潔すぎて業務日誌の比較による原因追究ができませんでした。業務日誌の利点として「情報の管理」「自己評価」「自己反省」を求める場合は、その日誌にある程度の情報量が必要だと感じました。
  特別支援の先生が、教務必携とは別に、教育相談や児童の様子を記入するためのノート
を作成し、持ち歩いているのを知りました。確かに、教務必携に気になる児童の様子を継続的に記入するスペースはないので、それを行う場合は別のノート等が必要となります。今回の実践を通して、学校事務必携は自分には欠かせないことがわかりました。ただ、教務必携と同様に、多くのことを記入しようとした場合、それだけでは足りません。学校事務必携では足りない部分を補うための業務日誌を作成してもよいのではないかと思いました。  
 事務職員は、各学校1人配置の場合も多く、アドバイスをくれる仲間が隣の席にいる教員とは環境が異なります。そのような環境の中で、業務日誌をつけたり日々見直すことにより、自分の仕事の進め方を客観的に見たり、問題点を浮き彫りにしたりすることができるのではないかと感じました。また、管理職に提出する保健日誌等とは異なり自分による自分のための日誌なので、経験年数や自分の課題によって自由に工夫できるのが大きな魅力ではないかと思います。業務日誌は自分の成長のためでもありますが、振り返ることで初心を忘れないためにも今後も継続していきたいと思います。

取組の具体例〈Bさん〉
 わたしの持つ業務日誌へのイメージは「記録をする」「やるべきことを書き出しチェックする」などのきちんとした作業の繰り返し、という堅いものでした。これまでも行事や予定、文書の回答期限など文書受付したものを学校事務必携に書き込んでいましたが、グループ研修の中で業務日誌をつけている先生の話を聞き、自分自身のための「業務日誌」に興味が出てきました。
同じような毎日の繰り返しで、疲労感や自分のペースを掴めないいらつき感など、そんな状況を変えたいという思いがあっての業務日誌のスタートでした。
スタート時点での目標を「18時退勤」としましたが、実際はほとんど達成できていません。しかし、時間を意識することと、業務日誌を書くことで「今日絶対するべきこと」が見えてくるようになりました。また、年々新しいことへの抵抗感が強くなり、その分スピードも遅くなっていると感じるのに、毎日処理する仕事は様々。常にパニック状態だったので、目標も内容も常に変えながら、自分自身を支えてくれるような、ほんの少し「安心」を得られる業務日誌を作りたいと思いました。
 
  【日誌の内容】
・明日の1日を予想する(書き出す)ことで、今まで ざっくりと「期限まで1週間仕事ができる」と思って いたことが、出張や会議、年休や外回りなどでほとん ど「集中して取れる時間」がない、自分が思い通りに 仕事ができる時間が限られていることに気づきました。 このことで、先を見通して仕事をすることに繋げてい かなければならないという「課題」が見えてきました。
・「やることリスト」を毎日確認しますが、書くのは前 日までにほとんど終わっています。月1回の定例的な 「郵券の締め」や「定例報告」などはその時の締めが 終わった段階で、翌月のリストに書き込むようして、 思い出した作業をこの時期位でやろうと書き込むこと にしています。
・「書き写す」作業が面倒なので、不在時の伝言メモや その場で書いた付箋紙、行事等のプリントなどをその まま貼り付けています。
 
 
 
 
 
 
 
・他の先生の取組を聞いて、「旅費」「学校予算」 の残額をその業務をした日だけ書き込むことにし ました。毎日書くのは面倒ですが、ついでに書く ことで予算の残額が頭に残るようになりました。
・慌てるばかりで作業が進まなかったり、やる気 が出ずに1日が終わったりすることがあるので、 「モチベーションスイッチ」スペースを作ってみ ました。1つの業務の合間に自分を見つめること で区切りをつけるように習慣づけたいと思ってい ます。
・文房具を楽しんで使っています。「やることリ スト」やスタンプ、シールやデコレーションテー プなどを使って、自分が「書く」ことを楽しんで います。
1日、1年があっという間に過ぎると感じるようになり、今日、今年度何をしたのだろう・・・と過ごしています。この取り組みで他の先生達の業務日誌の内容を多く参考にさせていただき、刺激も受けました。業務日誌は書く楽しみがあり、1日の中に「楽しみ」を取り入れることで気分的に少し違った気持ちで過ごすことができるようになりました。余裕がないときは書けないことが多いですが、書けなくてもOK、何でもOK。自分の好きなように変えていける「新しい仕事道具」を楽しく取り入れることができました。
 

                        

 

 

 

 

 


  
4 取組の成果について
 何のための業務日誌か(何をどのように書くのか)特にルールは決めなかったため、業務日誌に何を期待するのかは、様々でした。
何となく事務処理等を行い過ぎていく1日を自分で評価し「達成感」を感じたいと考えた人、見通しを持って効率アップに繋げたいという人、行き当たりばったりの日常で毎日がずっと繋がっているような疲労感やメリハリのない状況を変えたい!という人、計画的な執務をしたいという人、1年間の目標を書いて、毎日振り返ることができるようにした人、記録にもなるし便利そうという軽い気持ちで始めた人など様々でした。
 そのような目的意識を持ちながら業務日誌を付け始めたことにより、グループの全員がその効果を確実に実感出来たのは驚きでした。今回は誌面の都合上、具体的事例は2つだけの報告になってしまいましたが、グループの皆が自分なりに楽しみながら業務日誌をつけることで、仕事上の効率アップや課題の把握はもちろん、充実感や達成感を感じることができました。
「組織マネジメントのベースにあるものは、個人のマネジメントである。個人のマネジメントのひとつには、「仕事上の段取り力を高める」ことがある。」これは、平成19年度県事務研特別部会での講話の中で古川 治氏が話された言葉です。まさに、「業務日誌」こそが、この「仕事上の段取り力を高める」ためのツールとなり得ることを、私たちは実感しているところです。

5 おわりに
 業務日誌の魅力は、「誰でも」「簡単に」「自分の意志で」「継続出来る」「工夫出来る」といったところでしょうか。こうなりたい!こうしたい!というイメージを持ち、前向きに楽しく業務日誌を「自分のもの」にしながら、各自の目標達成に近づけていけたらいいなと思います。